特発性肺線維症

特発性肺線維症;特発性肺線維症(英:Idiopathic pulmonary fibrosis: IPF、またはcryptogenic fibrosing alveolitis: CFA)は特発性間質性肺炎(Idiopathic interstitial pneumonia: IIP)の1つで、肺の高度な線維化を主体とし、拘束性換気障害をきたす肺疾患である。他の特発性間質性肺炎(IIP)に比べて、ステロイド免疫抑制薬に対する反応性が悪く予後不良の肺疾患である。ちなみに特発性肺線維症の病理像は通常型間質性肺炎(UIP)と呼ばれるが、両者はイコールではない(UIPパターンを示す疾患はIPF以外にもある)
特発性肺線維症(IPF)は7種類ある特発性間質性肺炎(IIP)の中で最も頻度が高い。詳しい原因は今のところわかっていないが、喫煙等が危険因子になるとされている[1]。IPFにおいて炎症は必ずしも線維化に先行せず、様々な刺激によって生じた肺胞上皮の傷害に対して、その修復のためのコラーゲン等が増加し異常な修復反応が起こるために線維化が進むと考えられている。肺胞壁(間質の肥厚)により、酸素の取り込みが低下し、肺のコンプライアンス低下のために拘束性障害(肺活量低下)を生じるもので、症状として、乾性咳嗽や労作時息切れが発生する。特に、線維化に関してはTGF-βが重要な役割を担っていると考えられており、実際TGF-βはII型肺胞上皮に対して上皮間葉転換(epithelial messenchymal transition: EMT)を起こさせ、線維芽細胞や筋線維芽細胞への分化を誘導することが知られている[2]
症状としては主として呼吸困難をきたす他、咳を伴いばち指を認めることがある。進行すると二次性に肺高血圧をきたすことがある。IPFの発症は緩徐であり、数年の経過で進行することが多い。聴診では、両側肺底部を中心に吸気時捻髪音(fine crackles)を聴取する。

主診断基準[編集]

  • 薬剤性、環境暴露、膠原病など原因が既知の間質性肺疾患の除外
  • 拘束性障害(VCの低下)やガス交換障害(安静時や運動時のA-aDO2の増大、安静時または運動時のPaO2の低下、あるいはDLCOの低下)などの呼吸機能検査異常
  • HRCTで両側肺底部・胸膜直下優位に明らかな蜂巣肺所見を伴う網状陰影とわずかなすりガラス陰影(すなわちUIPパターンを呈すること)

副診断基準[編集]

  • 年齢が50歳を超える
  • 他の原因では説明しがたい労作性呼吸困難の緩徐な進行
  • 罹患期間が3カ月以上
  • 両側肺底部に吸気時捻髪音(fine crackles)を聴取する。

治療[編集]

特発性肺線維症(IPF)に対して確立した治療法はなく、また他の特発性間質性肺炎と異なり、ステロイド免疫抑制薬に対して抵抗性を示す。その中で、線維化を抑える働きを持つピルフェニドン(pirfenidone)がプラセボと比較して努力肺活量(FVC)や6分間歩行テスト(6MWT)において症状悪化の抑止効果を認めている[4]。ピルフェニドンの作用点はよくわかっていないが、in vitroでTGF-βTNF-αを抑制することが知られている。 また、PDE5阻害薬であるシルデナフィル(sildenafil)は6分間歩行テストでの改善は認めないものの、換気血流不均衡を是正し、呼吸困難などの症状緩和に働くと考えられている[5]。また、現在チロシンキナーゼ阻害薬であるニンテダニブ(nintedanib, BIBF1120)はIPFの治療薬候補として第III相の臨床試験が行われている[6]


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